「おかげさまで病状もよくなり、こうして神導位にも見初められ、親としては誇らしいものです」


貴一たちの話を聞いて、和葉は反吐が出そうだった。


病気ということも嘘。

誇らしいというのも嘘。


あれだけ黒百合の恥として虐げ、神導位である玻玖の暗殺をたくらんでいたというのに、よくもそのような作り話ができるものだと。


そう思いながら、和葉はぐっとこらえていた。


せっかくの乙葉の晴れの舞台を自分が汚すわけにはいかない。

この場さえ乗り切ればいいだけのこと。


和葉は、自分の話が早く終わることを願っていた。

口をつぐみ、うつむいて。


そんな和葉をおもしろく思っていないのは、乙葉だった。

主役は自分であるにも関わらず、貴一と清次郎の父親は和葉の話ばかり。


この場の注目が和葉に向けられていることがどうしても気に食わなかった。