乙葉の結婚相手は、黒百合家の次に財力があると言われている蛭間(ひるま)家の次男、蛭間清次郎(せいじろう)だった。

歳は、21歳。


スーツ姿という洋装で現れた清次郎。

清次郎の両親、蛭間家長男とその妻が同席した。


清次郎は、高い鼻が特徴的な整った顔をしている。

身長も高く、スーツがよく似合っている。


「黒百合殿、今日はよろしくお願いいたしまするぞ」

「こちらこそ、ぜひ」


互いの父親は、にんまりと微笑み合う。


結納はこれといったトラブルもなく、順調に進められた。


清次郎は、乙葉のかわいさに終始目を奪われている。

一方乙葉はというと、整ってはいるがどこか今ひとつ物足りない清次郎の顔に対して、面食いスイッチは入らないようだった。


乙葉にとっては、好きでも嫌いでもない顔。