拍子抜けした和葉は、使用人に部屋へと案内される。

実家であるから自分の部屋くらいわかるというのに、すっかりお客様のようなもてなしだ。


和葉の部屋は、嫁入りに行ったときのまま残されていた。


部屋の中も、屋敷も変わっていない。

唯一変わったのは、和葉に対する黒百合家3人の態度だった。


里帰りを快く受け入れられ、本来ならばうれしく思うはずなのに…。


3人の顔には、まるで笑った顔を描いたような面が貼りつけられているのではと思うほど、和葉にはどこか気味悪く感じた。


その後、主役である乙葉の支度が整った。

乙葉らしく、まぶしいくらいの真っ赤な着物を着ていた。


4人は車に乗って、結納が執り行われる料亭へと向かった。

この辺りでは高級とされる料亭で、広い敷地内には緑の苔が覆い尽くす美しい庭も広がっていた。