しかし、その中でも変わったものがあった。

――それは。


「和葉!待っていたわ!」


そんな声が上から聞こえて、思わず足が止まる和葉。

見ると、階段の上には満面の笑みの八重がいた。


「お……お母…様」


まるで首が締めつけられたかのように、和葉の喉がギュッと絞られ声が出ない。


『もう大丈夫です。いってきます』


菊代にはああ言って出てきた。

あのときは、大丈夫だと思っていた。


しかし、いざ八重を目の前にすると、和葉は体が固まってしまった。


和葉は、玻玖に愛されて知ってしまった。

貴一や八重からの愛は、“愛”ではなかったと。


だからこそ、微笑む八重の顔は今となっては恐ろしく感じるのだった。


「よく帰ってきたわね!お母様はうれしいわ」


階段を駆け下りてきた八重が、和葉をギュッと抱きしめる。