そうして、和葉を乗せた車は黒百合家へと向かった。



「和葉様、到着致しました」


思っていたよりも早く、1時間ほどで黒百合家に着いた。


運転手が後部座席のドアを開ける。


久々の実家に和葉はごくりとつばを呑んだ。

それはまるで、自分を奮い立たせているかのようだった。


「…和葉お嬢様ではありませんか!?」


屋敷に入ってすぐに和葉に気づいたのは、庭のはき掃除をしていた使用人だった。


「まあ、ずいぶんとおきれいになられて!お久しゅうございます」

「あ…はい。お久しぶりです」


和葉はペコペコと会釈をする。


使用人に連れられて、屋敷の中へ。

当たり前だが、なにも変わっていなかった。


絨毯の柄も、玄関の正面に飾られている高価な(つぼ)も、美的センスがわからない絵画もなにもかも。