「…そうですよね。でも、『乙葉』からというのが少し気になってまして…。もしかしたら、お父様やお母様の身になにかが起こったのではないかと思ってしまって…」


神妙な面持ちでつぶやくように語る和葉。

そんな和葉を玻玖は心配そうに見つめていた。


呪術の力がないというだけで家族として扱われず、自身に負の呪術をかけられ暗殺計画の駒とされたにも関わらず、それでも両親を思いやる心があるのかと。

それがやさしい和葉らしいと言えばそうなるが、玻玖にはどこか健気で切なく感じた。


「旦那様…、わたし…」

「ああ、わかっている。気になるのなら、文を開けるといい」

「ありがとうございます…!」


和葉はその場で封をちぎる。

いったん深呼吸をして、中の文に目を移す。


黒百合家に不幸があったのではないかと心配していたが、そこには和葉が思っていたこととは真逆の内容が書かれてあった。