呪術の力がないことを未だに引け目に感じていたが、そんな不安をも取っ払われるほどに、和葉の心に響いたのだった。


それからも、平凡な日々を過ごしていた和葉。

しかしある日、そんな和葉のもとへ――ある1通の文が届く。


「和葉様」


部屋の外から菊代の声がして、障子を開ける和葉。


「どうかしましたか?」

「和葉様に、文が届いております」

「わたしに……、文…?」


和葉宛ての文は、これまで結婚する前に玻玖が送ったもののみ。

貴一や八重からも、東雲家の情報収集としての文が送られてきていたかもしれないが、差出人がその2人の名前のものは弾かれるようにと玻玖が呪術をかけていた。


黒百合家とは縁を切ったつもりでいた和葉だが、今手渡された文の差出人を見て、声も出ないほどに驚いた。


【黒百合乙葉】