偽りの花嫁~虐げられた無能な姉が愛を知るまで~

和葉の表情が固まる。


見せるもなにも、呪術など使えない。

貴一と八重に睨まれているわけではないから、帝に直接本当のことを伝えればいいだけのこと。


しかし、そうしたら玻玖に迷惑をかけてしまうかもしれない。

神導位でありながら、なぜこのような無能な娘を妻にしたのかと。


きっと、見る目がないにもほどがあると馬鹿にされ、笑われることだろう。


和葉は、自分がなんと言われようとかまわなかったが、玻玖の重荷にはなりたくなった。


「あ…あの、帝様…。その…」


適当な言い訳が思いつかない。


冷や汗が流れる和葉。

うつむいたまま、顔を上げることができない。


――すると、そのとき。


「帝さん、今は呪披の儀ではありません。和葉に呪術を求めるのはやめていただきたい」


玻玖が庇うようにして、和葉の前に腕を伸ばす。