狐の面を被っていて素顔は見えないが、東雲家に嫁いで二月(ふたつき)、和葉は菊代に心を許すような仲にまでなっていた。


玻玖は、毎日のように和葉をかわいがる。


和葉がなにをするにしても気にかけ、そばで見守る。

それは、新婚の夫というよりは、過保護な親のようにも見える。


それくらい、玻玖は和葉がかわいくてかわいくて目が離せなかったのだ。


夜は、縁側で2人で月を見るのが日課となっていた。


「和葉がこうしてそばにいてくれるのなら、他にはなにもいらない」


狐の面をして表情が読み取れない玻玖が言うと、そんな甘い言葉もどこか無機質に感じる。

だからこそ、初め和葉は玻玖の真意がわからなかった。


しかし、毎日毎日そのような甘い言葉をかけ、十分すぎるくらいかわいがってくるものだから、いつしかそれが玻玖の真意であると感じ始めた和葉。