「あの人の考えそうなことだ。俺が死ねば、嫁となった和葉…つまり黒百合家が東雲家を乗っ取り、神導位の座も戻ってくるといったところか」


和葉が説明しなくとも、玻玖にはすべてお見通しだった。


「それにしても、実の娘に負の呪術をかけるとは…。信じられない…!」


ギリッと下唇を噛む玻玖。


「旦那様、…父は悪くないのです。決めたのはわたしですから」

「こんな使い捨て同然のような扱いをされて、どうして庇うんだ…!?」

「それは――」


和葉は一瞬口をつぐむ。


そして、見ていてつらくなるくらいの笑顔をつくって答えた。


「それは、…わたしの父だからです。親子の絆を深めるために、愛を注いでくれようとした“父”だからです」


今にも泣きじゃくりそうな和葉の笑みは、玻玖の心を締めつけた。