「“キス”…とは、口づけのことでしょうか。…そういうわけではありません……」


和葉は悟ってしまった。


今はなんともなかったとしても、じきに玻玖の体は毒に侵されるのだと。

玻玖はもう助からないと。


「…旦那様。わたしもいっしょに死にます」

「死ぬ…?なぜだ?死んでは困る。結婚したばかりだというのに」

「正直にお話します…。じ…実は、わたしの口づけには――」


すべてを告白しようとした和葉の唇を玻玖が人差し指で塞ぐ。

思わず口をつぐむ和葉。


「だから、『なにもしゃべるな』と言っただろう?」


そう言って、玻玖がやさしく微笑む。


「初めからわかっている。お前の口づけに、『眠毒ノ術』がかけられていることは」

「…え……」


あまりにも衝撃的な事実に、和葉は言葉を失った。


「それをわかっていて…、どうしてわたしを受け入れたのですか…!」