幽霊かと思った。

しかし、和葉の髪をなでる手には温もりがあり、足だってちゃんとある。


「やはり、体調が悪いんだな。もう寝なさい」


玻玖は体を起こすと、掛け布団を和葉の体の上へとかけた。

そして、狐の面をつけ直す。


結婚初夜だからといって、玻玖はなにもしてこない。

あのたった一度の口づけだけ。


それどころか、終始和葉の体調の心配をしていた。

だれかに気にかけてもらったのは、いつぶりだろうか…。


とても大事にしようとしてくれている。


そんな玻玖の思いが伝わってきた。


『和葉、愛している』

『これから先、一生をかけてお前だけを愛すと誓う』


だから、あれらの言葉もすべてが本当だとしたら――。


和葉の胸が痛いくらいに締めつけられる。


思いやりのあるやさしいお方を殺そうとするなんて、わたしは――。