「…そうだな。こんな面で顔を隠している男なんかに、『愛している』と言われたところで、なにもうれしくはないな」


なぜなら、そのように語る玻玖が――。

狐の面を外していたからだ。


いつもしている狐の面は、玻玖の大きな手のひらの中。


初めて見る玻玖の素顔は、暗がりでぼんやりとしか見えない。

しかし、まるで本物の翡翠のような色をした瞳が和葉を捉えて離さなかった。


「普段は決して外さないが、和葉のためなら仕方あるまい。…それに、今日は“満月”だからな」


玻玖は微笑むと、月明かりが映る障子に目をやる。

そして、和葉の両肩に手を添える。


「これから先、一生をかけてお前だけを愛すと誓う」


玻玖は、やさしく和葉を布団の上に押し倒した。


愛おしそうに見つめる魅惑的なそのまなざしに、思わず目を奪われそうになる和葉。