玻玖はひざまずくと、和葉を座らせるようなかたちでそっと下ろした。


目の前には、玻玖の無防備すぎる唇。

それを見て、ごくりとつばを呑み込む和葉。


貴一と八重から褒められたい一心で、覚悟を決めてこの場にきた。


あとは、あの唇に口づけを交わせば――。


玻玖は和葉を見つめたまま、徐ろに部屋の隅にある文机(ふづくえ)の上のランプに向かって手を伸ばす。


すると、手の届かない距離だというのに、これも呪術だろか、玻玖が柔らかく手を握ると、まるで吹き消されたかのようにランプの灯がひとりでに消えた。


暗闇に包まれる寝室。

その中で、2つの影が見つめ合う。


聞こえるのは、互いの息づかい。

そして、和葉だけに聞こえる速く激しい自分の鼓動。


「和葉、愛している」


ふと、闇に溶けるように囁かれる声。