それなのに、想像していた展開と違って驚き慌てる和葉。


「…お待ちください、旦那様!」

「どうした?必要なものでも思い出したか?」

「い…いえ。そういうわけでは…」


今夜、この場で、この口づけで。

玻玖を殺さなければならないというのに。


「そ…その。ですから…」


言葉に詰まる和葉は、口をもごもごとさせる。

恥ずかしそうに少し唇を噛みながら、頬をほんのりと赤く染める。


その姿を見た玻玖は、いったん足を止めた。

そして部屋の障子を閉め直すと、ゆっくりと和葉のもとへ。


「…きゃっ…!」


和葉から小さな悲鳴が漏れる。


それもそのはず。

突然玻玖が無言のまま、和葉をそのたくましい腕で抱き上げたのだった。


軽々と和葉を抱きかかえる玻玖は、ゆっくりと部屋の中央に敷かれた布団の上へ。