「…盃という間接的な方法であったがために、『眠毒ノ術』の効果が薄まったのだろうか。…それも考えにくいが」


貴一は顎に手を当てて、1人でぶつくさと言っている。


「…まあいい。間接的なやり方が効かんのであれば、直接毒を送り込んでやればいいだけのこと」


不気味なくらいに笑みを浮かべる貴一が、和葉に目を向ける。

思わず身震いしてしまうくらいのおそろしさだった。


「和葉。結婚初夜である今夜、あやつにその口づけをくれてやれ」

「…えっ……」

「お前だって、もう立派な女だ。やり方くらいは言わんでもわかるだろう」

「…ま、待ってください!お父様は、まだ東雲様のお命を狙うおつもりですか…!?」

「当たり前だ。それに、これが黒百合の人間としてのお前の使命だ」

「そんな…。わたしは…もう――」