和葉が盃に口をつけるところを間近で見ていたというのに、そのことは棚に上げて、和葉を一方的に責める貴一。


「それならば、どうしてあの男はピンピンしているというのだ!?」


そんなことを言われても和葉にわかるはずもないが、苛立つ貴一。


内心、正気を取り戻した和葉はほっとしていた。

貴一の命令とはいえ、やはり罪のない人を殺めたくはないのだから。


「一杯だけならともかく、三杯も盃を交わして死なんとは…。……まさかあやつ、はなから毒耐性を持っているのか?」

「お父様、そんな人間なんているの?」

「ああ。いないこともない。厳しい修行が必要だがな」


とは言いつつも、あんなあっけらかんとした男が
そのような修行に耐えたとも到底思えない。


しかし、貴一が込めた負の呪術で死ななかったことは確か。