「…あっ。い…いえ……。でも、その…」


とっさに、「お体はなんともございませんか」という言葉が口をついて出てきそうになった和葉。


予想もしていなかった展開への驚き。

それと同時に、一度目はなにかの手違いで次こそは本当に――。


と、改めて覚悟をする和葉の手は震える。


しかし、目の前にいるのは平然として残りの盃も同じように和葉から受け取ったのちに飲み干す玻玖の姿だった。


『眠毒ノ術』にかかったような症状は一切見られない。


八重もこの異変に、貴一に視線を送る。

「一体どういうこと!?」とでも言いたそうな鬼の形相だ。


だが、そう問いたいのは貴一のほうだった。


こうして、そのあともなにかが起こるわけでもなく、東雲家と黒百合家の『呪結式』は無事に執り行われたのだった。