――東雲玻玖、死す。


これで、東雲家は滅亡。

現神導位を失い、再び神導位の座は黒百合家へ。


そう思っていた貴一。


だが――。


玻玖は、和葉から受け取った1つ目の盃の酒をすべて飲み干すと、何食わぬ顔で空になった盃をもとの位置へと戻した。


その姿に、唖然とする貴一。

八重と乙葉も口をぽかんと開けて、目を丸くしていた。


…おかしい。

なぜ死なない…!?


『眠毒ノ術』がかかった唇で触れた酒を飲んだというのに…!


思わず、そう叫びそうになったのをなんとか押さえる貴一。


予想外の展開に驚く貴一だが、深呼吸をして無理やり心を落ち着かせる。


それまで死人のような顔だった和葉も、あまりの驚きで2つ目の盃を落としてしまうほど。


「和葉、そんなに驚いてどうかしたか?」