玻玖と和葉の前には、酒の注がれた大中小の3つの盃が並べられている。


その一番小さな盃を手に取る玻玖。

ゆっくりと口をつけ、それを和葉へ手渡す。


和葉は無表情で盃を受け取ると、紅の塗られた唇を触れさせる。

かすかに波打つ盃の酒。


それを貴一は見逃さなかった。

こらえながらも、ニヤリと口角はわずかに上がってしまう。


和葉の唇が触れたあの盃と酒は、『眠毒ノ術』で侵された。

あとは順序どおりに、その酒を再び受け取った玻玖が飲めば――終わり。


こんなにも思ったとおりに計画が進むものかと、貴一は笑いをこらえるのに必死だった。


盃は、和葉の手から玻玖のもとへ。


まさかその酒に毒が盛られているとも知らず、玻玖が盃に口をつける。


すべての視線が玻玖の口元へと集まった。


ゴクリと、玻玖の喉仏(のどぼとけ)が上下する。