「わたしに…ですか?なんでしょうか」


キョトンとして首をかしげる和葉。


結婚前夜に告げられる父親からの頼み事。


嫁に行っても、忘れないでほしいだろうか。

はたまた、度々顔を見せにきてほしいだろうか。


そんな言葉を期待していた和葉に、貴一は言い放つ。


「東雲玻玖をあの世へ葬れ」


一瞬、頭の中が真っ白になる和葉。

思わず、「え…」という小さな声が漏れる。


「…お父様、それはどういう――」

「そのままの意味だ。計画は、乙葉のときと同じ。偽の花嫁として東雲に近づき、油断しているところを殺すのだ」


乙葉が花嫁に選ばれなかったため、この暗殺計画は破綻したかと思われていた。


しかし貴一は、和葉が選ばれたからといって諦めてはいかなかった。


「ですが、お父様…!わたしには呪術は使えません。東雲様を殺めることなどそもそも――」