「お父様。こんな遅くにどうされたのですか」

「和葉に話がある。今からわしの部屋へくるように」


それだけ言うと、貴一は背中を向けていってしまった。


和葉は急いで桜色の着物をたとう紙の中へと片付ける。

半分に破れていた写真もいっしょに。


「失礼します」


和葉が貴一の部屋へ入ると、八重と乙葉もいた。


こんな夜遅くに全員集まって何事だろうか。

殺伐としたこの部屋の空気を感じる分には、明日の嫁入りの祝いの言葉をかけてもらえるとも思えない。


「和葉、座りなさい」

「はい…」


貴一が指差すのは、貴一の向かいに座る八重と乙葉の前。

和葉は様子をうかがうようにして、言われたとおり貴一と八重たちに前後から挟まれるようなかたちで貴一の前へと正座する。


後ろから無言で、和葉をじっと見つめる八重。