和葉という存在を尊重し、必要としてくれた。


もし玻玖がその言葉どおり、妻として求めてくれるのなら――。

再び神導位の座をと願う黒百合家のためにはならないが、無能な自分が家を出ることもまた、黒百合家のためになるのではないだろうか。


――東雲玻玖と結婚する。


そんな未来があってもいいのかもしれない。


和葉はそう思い始めていた。


その日を境に、足踏みしていた貴一の態度が一変する。


たびたび和葉に会いにやってくる玻玖を快くもてなし、結婚に向けての話を着実に進めていった。


和葉自身もまだ夢の中にいるようだった。

自分がだれかのお嫁さんになる日がくるなんて。


そして、凍えるような寒さが過ぎ去り、桜が咲き始めるころ――。

ついに、玻玖と和葉の結婚式を明日に迎えることとなった。