そのあと、貴一に部屋へくるようにと呼ばれる和葉。


「八重から、東雲殿から着物をいただいたと聞いたぞ」

「は…はい。そのあと、喫茶店にも連れていっていただき、アイスクリームもご馳走になりました」

「そうか」


貴一はそれだけ言うと、顎に手をあてて考え込んでしまった。


「もうよい、和葉」

「はい…」


貴一の部屋から出ると、和葉は噂話の好きな使用人に捕まる。


「和葉お嬢様、聞きましたよ!東雲様が、その素敵なお着物を買ってくださったとか!」

「あ…、はい。…そうなんです」


そして、和葉はその使用人から初めて聞かされることになる。


玻玖が言っていた『デート』というものが、愛し合っている男女が2人だけで会う『逢引(あいびき)』と同じ意味であるということを。


「わ…!わたしがしていたのは、『逢引』だったのですか…!?」