呪術も使えない自分が嫁に選ばれてしまったら、貴一の暗殺計画は破綻する。


それは、貴一のためにはならないというのに――。


『他のだれでもない和葉と、俺は夫婦になりたいと思った。ただそれだけだ』


和葉は、純粋に玻玖の言葉がうれしかった。

こんななんの取り柄もないような自分を受け入れてくれる人がいるのかと思うと。


すると、玻玖が驚いたように口を開けて和葉を見つめている。


「…どうした、和葉」

「え…?」

「なぜ泣いている」


玻玖にそう言われて、初めて気づいた。

頬に一筋の涙が伝っていることに。


「も…申し訳ございません…!目にゴミが…」


和葉は慌てて涙を拭う。


自分自身でも驚いたが、この涙は決して悲しいわけではない。

悲し涙の際はいつも、『泣いてはいけないよ』と声がするからだ。