呪術の最高峰と言われる黒百合家に長女として生まれながら、その力を受け継がずに生まれ、家族からも煙たがれる存在の和葉。


これまでの人生、その存在を求められたことなどなかった。


それなのに、玻玖はなぜ――。


答えは期待していなかった。

新しい神導位の玻玖に関する新聞の記事でも、変わり者のようなことが書かれていたから。


「そうだな。お前なんかよりも、やはり乙葉にしよう」

「呪術を持たないおかしな娘がいると聞いたから、ただの興味本位だ」


そんな言葉が返ってくると思っていた。


――だからこそ。


「呪術師の妻として役に立つなどとは関係ない。他のだれでもない和葉と、俺は夫婦になりたいと思った。ただそれだけだ」


予想だにしなかった玻玖の言葉に、和葉は思わず胸を打たれたのだった。