――“かわいい”。


その言葉の反応に困り、頬を真っ赤にする和葉。


『かわいい』という言葉は、これまで乙葉にしか使われてこなかった。

だから初めてのことで、素直に喜ぶというよりも恥ずかしさのほうが勝っていた。


「それよりも、体のほうは大丈夫か?つらかったら言ってほしい」

「…え?体…ですか?」

「病に伏せっていたんだろう?」


それを聞いて、はっとする和葉。

初めての外出で浮かれすぎて、表向きはそういう話になっていることをすっかり忘れていた。


「あ…、あのっ…えっと……」


あからさまに目を泳がせる和葉。

そんな和葉に、玻玖はやさしい口調で声をかける。


「ごまかさなくたっていい。嘘だということは初めからわかっている」


和葉は後ろめたさから、とっさにうつむく。