和葉はそんな話を陰から聞いて、頭の中で想像することしかできなかった。


しかし、屋敷から出られない自分が都へ行くなど夢のまた夢。

和葉はずっとそう思ってきた。


――すると。


「都になら行けるさ。…いや、いっしょにきてほしい。神導位の妻として」

「…妻?」

「ああ。黒百合さんが神導位の職務で都に行っていたように、俺も今後そうなることだろう」


口元が微笑む玻玖。


「そういうことなら、神導位になるのも悪くもないな」


と、そのあとに小さくつぶやいていた。


「それにしても、以前会ったときとは雰囲気がまったく違うな」


狐の面が、上から下へと和葉の着物に視線を送る。


「…あ、これは――」


八重が選んでくれたとはいえ、「妹のお下がりです」――とは、さすがに言えなかった。