使用人に連れられ、玻玖が待つという客間へ案内される和葉。


客間の前にいったん正座すると、緊張で今までに経験したことがないくらいの鼓動の速さを感じた。


「し…、失礼いたします…」


頭を下げ、和葉の準備が整うと、使用人たちが端から障子を開ける。


ゆっくりと顔を上げる和葉。

持っていた湯呑みを置いた玻玖と目が合った。


実際には、面越しで目が合っているかということはわからない。

しかし、和葉にはどこか玻玖の目が笑っているように見えた。


「和葉、久しぶりだな」


玻玖はそう言って立ち上がると、床につく和葉の手をそっとすくい上げる。

初めて男性に手を触れられ、顔を赤くする和葉。


「きょ…今日はどうされたのでございますか…?」

「まあ…とくに用事はなかったが、文のことが気になって…な」