東雲様が…わたしに会いに?


だれかが自分のために訪問したことは初めだった和葉は、逆にどのようにすればいいのかわからなかった。


「くるなら連絡のひとつでもほしいものだわ」


と愚痴をこぼしながら、八重は和葉の部屋から出ていく。


そのあと和葉は、使用人たちに急かされるまま着替えの手伝いをされる。


「和葉お嬢様、とってもお綺麗です!」


鏡の中でにっこりと微笑む使用人と目が合う。

そこに映る和葉は、いつもの淡い色の着物と違った派手な着物を着て、長い黒髪を上で1つにまとめられていた。


顔は違うが、ぱっと見はまるで乙葉のような姿だった。

使用人たちは普段乙葉の世話をよくするせいか、仕立てる装いも自然と乙葉に寄っていた。


こんな高価な着物は初めて着る。

乙葉が着なくなった着物とはいえ、お母様がわたしのために選んでくださった着物――。