邪魔な東雲家を潰すことも、神導位の座を奪い返すこともできない。


玻玖と和葉の縁談話はゆっくりとではあるが進みつつも、貴一は未だに決めかねていた。


そして、時間は現在に戻る。


数日前に届いた玻玖からの文。

和葉はそれに返事を書こうとして、こうして固まること…小一時間。


文など書いたことももらったこともない和葉は、なにも言葉が浮かんでこずに困っていた。


それから7日ほどがたったとき――。

大慌てで、使用人が和葉の部屋にやってきた。


「和葉お嬢様!すぐにお出かけのご準備をなされてください!」

「お…、“お出かけ”…?わたしが…ですか?」


幼いころに両親から屋敷の外へ出るなと言われてから、和葉はその言いつけを守ってきた。

表向きは、病で伏せっているということになっているから。