玻玖は、貴一と八重の間にちょこんと正座する乙葉に目を移す。


狐の面を被った玻玖と目が合ったような気がした乙葉。

本当のところは『気味が悪い男』と思いつつも、とりあえず愛想笑いを浮かべる。


だが玻玖は、そんな乙葉からあっさりと視線を外した。


「…で、我が東雲家に嫁いでくださる娘さんはどちらですか?」


玻玖の言葉にキョトンとする3人。


「…東雲殿、なにをご冗談を」

「そうですよ、東雲様。嫁となる乙葉はここにいるではありませんか!」


そう言う貴一と八重に挟まれた乙葉は、これでもかというほどの笑顔を振りまく。

その笑顔は、たいていの男であれば思わずにやけてしまうほどのかわいらしいものだった。


しかし、口をつぐんだままの玻玖の頬は一切ゆるまない。


「こちらこそ、なんのご冗談でしょうか。俺が縁談の申し出と文を出した相手は、この娘ではありません」