「────隆永さ……今の、何」
震える声でそう問いかける幸に、隆永は奥歯をかみ締めた。
「ねぇ……どう、いうこと? 抹消って、何……?」
「ごめん……っ」
「どうして、謝るの……?」
幸には黙っていたことがあった。生まれた二人目の子供についてだ。
一人目が生まれた瞬間その子に言祝ぎが偏った場合、二人目の子供は生まれた瞬間文字通りその場で即時抹消される。
二人目に産まれてくる子供の呪が強すぎるあまりの措置だった。
そんな事を幸に伝えられるはずがなかった。自分の命をかけてでも、二人揃って産むことを誰よりも望んでいたのが幸だった。
再び下腹部の激しい痛みに幸は歯を食いしばった。
「幸さま、頑張って下さい!」
巫女たちが励ましの声をかける。
幸の目尻から涙が溢れた。
「殺さないで、お願い。隆永さん、お願い……っ」
呻き声の合間に、息を切らしながら幸が叫んだ。



