耳に痛いほどの静かな夜に、小さな産声が上がった。

その瞬間、産声を中心にふわりと優しい風が生まれて社中を吹き抜ける。


その風は、隣室に集まっていた神々廻家の一族の元にも届く。いち早く気がついた真言が喜びの表情を浮かべ、すぐに顔を曇らせた。



「生まれたか!」

「この風……やはり言祝ぎは兄に偏ったか」

「ならば今すぐ二人目を抹消すべきだ!」

「凶兆だ。我々の手には負えんぞ」



立ち上がった神職たちに、真言が障子の前に立つ。


「まだ二人目のお子はお生まれになっておりません!」

「退け、真言。言祝ぎが偏ったということは、次に生まれるのは"呪い"だ。被害が出る前に抹消する」

「"呪い"ではございません、宮司と幸さまのお子です!」

「このままでは大勢の者がその子供に呪われることになるんだぞ!」

「ですが……ッ!」


強く押しのけられた真言は部屋の隅に転がった。壁に背中を打ち付け呻き声を漏らす。

くそ、と己の非力さに拳を握った。