「────ん……」

「あ、起きた。おはよ」


自分を見下ろして微笑む隆永の顔をぼんやりと見つめる。



「……私、寝てた?」

「ん、一時間くらい」

「ごめん、邪魔しちゃったね」


いつの間にか枕替わりにしていた隆永の膝から起き上がる。すかさず隆永が手を添えてくれた。

起き上がるのにも一苦労なほど膨らんだお腹に手を当てる。



「汗かいてるね、着替えてきたら?」

「うん、後で」


そう言って隆永のそばにすり寄る。

隆永は何も言わず幸の腰に手を回した。


「お仕事してたの?」

「いや、もっと大事なこと」


手にしていた筆を置いた隆永は幸に見せるように机の上の紙を引き寄せる。


「子供の名前なんだけど、何通りか考えてみたよ」

「わっ、さすが隆永さん。見せて見せて」



隆永の手元を覗き込んだ幸は、さっと目を通して苦笑いを浮かべた。


「ちょっとこれ難しすぎない……? 私ですら読めない名前があるよ」

「皆こんなもんだって」

「ダメダメ、全部却下。学校でからかわれたらどうするの。他に候補ないの?」



えー、と不服そうな声を上げた隆永は使いたい漢字の候補も一応書き留めていたらしい。

それをそばに寄せて幸に見せた。