固まる隆永を心配したのか、彼女は不安げな顔でショーウィンドウを回って出てきた。

隆永を見上げながら首を傾げる。三角巾から零れたショートカットの黒髪がさらりと耳にかかった。ほのかに桃の香りがする。

大きな瞳が隆永を見上げた。桜色の唇が「あの、大丈夫ですか?」と鈴のような愛らしい声を紡ぐ。


隆永は気がつけば手を伸ばし、彼女の両手を掴んだ。



「……え? あの、お客さま?」



彼女の瞳が驚きと困惑で揺れる。

隆永は構わず続けた。





「────俺と結婚してください」