「……生きてよ、幸。なんのために結婚したの、なんのために一緒に生きる道を選んだの。これから何十年も、同じ景色を見て笑い合うためじゃなかったの」
幸の肩にぽたぽたと熱い雫が落ちた。隆永の身体が小刻みに震えていた。
「前にも言ったよね。私の中ではこの子達も、隆永さんと同じくらい大切になっちゃったの。大切な人を亡くして、私も生きていけない」
頬にあたる硬い髪の毛を撫でた。
好きな人と結婚して好きな人との子供を身篭って、一番幸せなはずなのにどうしてこんなに泣いてばかりなんだろう。
どうして、悲しませてばかりなんだろう。
「どうしても?」
「どうしても」
「……絶対?」
「……絶対」
隆永が抱きしめる手に力を込めた。それに答えようと幸も手に力を込めた。
「────絶対に助ける。幸も、腹の子らも」
耳元で囁かれた声に幸はハッと顔を上げた。
「隆、永さん……?」
「三人とも助ける方法を、俺が見つければいいんだ」
まるで青い炎が暗闇の中で揺れているような声だ。熱く、激しく、心が高ぶる。