「これ、なんの本……?」
「言霊の力についての本だよ。双子の出産について、書かれてる箇所を洗い出してる」
おにぎりを頬張りながら隆永は書物の頁をめくる。
「まだ、諦めきれない……? まだ、この子達のこと、殺そうとしてる?」
「そうだって言ったら?」
隆永の淡々とした言葉に目を伏せた。
「幸が死んだら、俺には何にも残らないんだよ」
「子供たちがいる。私と隆永さんとの子供だよ」
「幸がいない世界で生きていけと?」
「だって隆永さんは、この子達の唯一無二のお父さんなんだよ……!」
「お前だって俺の唯一無二の存在だよッ!」
ダン、と机を叩いた隆永が泣きそうな顔で幸を睨んだ。
「でもこの子達がいなくなれば、私の心が死んじゃうの……! 死んだも同然なの!」
「魂がここにあれば何とでもなる。俺がそばにいる、俺がずっと幸を守る」
「隆永さんお願い話を聞いて……!」
「聞いてる! 聞いて、そのお願いは聞けないって言ってるんだよ!」
強く手を引かれて固い胸板が頬に当たった。腕が後頭部と背中に回されて、苦しいくらいの力で抱きしめられる。