「隆永さん、今日もご飯食べてないんですか……?」
「ええ……大変な時期に心労になるようなことを申し上げてしまいすみません」
真言は項垂れるようにそう言う。
幸は小さく首を振って「そうですか」と眉を寄せた。
幸が社へ戻ってきて三日が経った。
これまでは同じ部屋で過ごしていたが、隆永は幸が来る前に寝起きしていた私室へ強制的に移された。幸の部屋には見張り役が付けられている。
どれもこれも、隆永が腹の子を手にかけてしまうのを阻止するためだ。
「社のお勤めはきちんとこなしているんですが、それ以外の時間はずっと部屋にこもられていて」
「隆永さんは何を……?」
「ずっと書物をお読みになっています。過去の双子の出産に関するもののようで」
幸は目を伏せた。
いつか隆永とは、面と向かって話し合いたいと思っていた。これからのこと双子のこと、双子を産んだ後のこと。
今がその時なのかもしれない。
「真言さん」
「はい?」
「隆永さんと話します」
「ですが今宮司はかなり不安定で、もしかするとお子達に」
「分かってます。でも、今話さないと隆永さんとはもう二度と話せなくなる気がするんです」
幸は立ち上がった。
真言が不安げに「でも」といい籠もる。