幸の質問に不思議そうな顔で首を傾げる。


「松岡清志さまより13時から安産祈願の神事のご予約を承っておりますが……」


その言葉に目を見開く。

清志は何も言わなかったけれど、ずっと隆永と同じ考えなのだと思っていた。娘を産んで妻が亡くなっているんだから、そう考えるのは当たり前だろう、と。

だから清志とも何も話そうとしなかった。


それなのに。


「────っ、」


溢れた涙がぼろぼろと頬を伝った。

巫女の彼女が驚いたように幸に駆け寄ってその肩を摩る。



自分以外の誰も、この子達が産まれてくることを望んでくれる人は居ないのだと思っていた。


膨らみかけた腹をさすって必死に涙を止めようと歯を食いしばる。


おじいちゃんは、二人が産まれてくることを楽しみにしてくれているよ。


心の中でそう語り掛けると、今まで張り詰めていた物が弾けるようにもっと涙が溢れた。