「……ここ?」
渡された住所の紙と目の前の鳥居を見比べて、幸は眉根を寄せた。
目の前には石で出来た小さめの鳥居があって、その奥には本殿が見えた。社務所を兼ねた授与所と手水舎しかない、こじんまりした神社だった。
小さい頃清志と何度か参拝したことがある。
清志に渡された住所はここで間違いない。
一度清志に連絡するべきかと思案したが、とりあえず中へ入ってみることにした。
鳥居の前で一礼して中へ入り手水舎で手を清める。本殿を参った後、授与所にいた巫女に声をかけた。
「あの、松岡ですが……」
「松岡さま、ようこそお参りです。お待ちしておりました。ご案内します」
清志の言う通り名前だけで通じたらしく、巫女はいそいそと腰を上げて外に出てくる。
紙袋を渡して終わりかと思えば「どうぞこちらです」と本殿へ案内された。
「え? あの、私父にこれを渡すように言われただけなのですが……」
「神饌ですね。お預かりします」
神様にお供えするものをそう呼ぶのだと隆永から教わった。
神饌? お父さんは配達だって……。
「中でお待ちください。もう間もなく宮司がいらっしゃいますので」
「宮司……? すみません、どういうことですか?」