激しい破裂音と共に、隆永が幸の両肩を掴んだ。そのまま押し倒すようにベッドの上にねじ伏せられる。
身体中が隆永を拒絶するかのように強い抵抗感を感じる。
「隆永さんッ! やめて、離して!」
「すぐ終わらせる、起きた時には全部忘れてるから」
「やだッ、隆永さん!」
鉄臭い臭いがした。ハッとしてお腹を見下ろすが何ともない。
もっと近い所から臭って、目だけを動かす。自分の腕を掴む隆永の手が火傷のように赤く爛れて流血していた。
「隆永さん血が……ッ」
何を言っても声が届かない。
隆永はすっと息を吸った。
次の瞬間、紡ぎ出された言葉の羅列はまるで黒板を爪で引っ掻いた音のような不愉快さを感じた。全身が粟立ち息が出来ない。
今すぐにでも逃げ出したいほどの不快感が身体中に走った。
電気が弾ける音が激しく耳元で響く。
「……ッ、隆永さん!」
渾身の力で手を振りほどき勢いのままにその頬を叩いた。
隆永の言葉が途切れて、力が緩まる。その隙を逃さず立ち上がって部屋の隅に逃げた。
「お父さんッ! お父さんッ!」
そう叫べば、居間で眠っていたのだろう清志が「な、なんだ?」と寝ぼけ眼で部屋へ転がり込んでくる。
幸は父親の背中に隠れ抱きついた。
「さ、幸……? 隆永、お前……」