「それ、俺に渡して」
隆永は手を差し出した。
感情の籠らない冷たい声、普段とは違いすぎる隆永に戸惑った。
ポケットの中に手をいれてぎゅっと握りしめる。
「……どうして?」
「それがあると、幸も長い事苦しむ事になる。俺に渡して、ベッドに横になって。すぐに済ませるから」
「待ってよ隆永さん、何の話……? 苦しむ? 済ませる? 分かるように説明して」
「終わったあとで全部話すよ。ほら、渡して」
詰め寄った隆永に、幸は咄嗟に腹を守るようにして体を抱きしめた。
無意識に体がそう動いた。
「いい加減にしろ、幸」
怒りに満ちたその声に体が震えた。
そしてその声が紐付く、夢の中で聞いた「嫌な音」に。
「なに……しようとしたの。────赤ちゃんに何しようとしたのッ!」
責めるようにそう叫ぶ。隆永を睨みつけた。
やっと顔を上げた隆永が眉を下げて笑った。
「ごめんな、幸。こうするしかないんだ」