部屋の壁に背を預けて座り込んでいる。まるで強い力で壁まで吹き飛ばされたような格好だった。
「隆永さん、どうしたの! ねぇ大丈夫? なんでそんな、」
慌てて歩み寄ってその肩に触れようとしたその瞬間、夢の奥底で聞いた静電気が走るような音が自分の指先から鳴り響き、驚いて身を引いた。
「なに、これ……」
自分の周りを卵色の薄い膜が覆っていたのだ。
もう一度隆永に触れようとすれば、その膜が白く光って手を弾き飛ばす。
「幸……何か持ってる?」
顔を上げずに低い声で静かにそう尋ねた隆永に戸惑う。
喧嘩しているときですらそんな声は出したことがないのに、まるで威圧するような声でそう問いかけた。
「持ってるって言われても、眠ってたし何も……あ」
スカートのポケットの膨らみに手を当てて思い出した。両側のポケットにみんなから貰ったお守りを入れたままにしていた。
「お守りが……」
「安産祈願か、なるほど。合点がいった」
息を吐いた隆永はぶつけたらしい背中をかばいながらゆっくりと立ち上がる。
何故か分からないけれど、体が咄嗟に後ずさる。