恐ろしい夢を見た。何かに追われている夢だった。
けれど振り返ってもそこには何もいなくて、前も後ろも右も左も果てしない暗闇が広がっているだけ。
ただ耳を塞ぎたくなるほどの嫌な音が自分に纏わり付くようにどこまでも響く。
得体の知れないそれは、自分よりもお腹の中の子供を狙っているような気がした。
まるで沼に足を取られたかのように上手く歩けなくて、膝を着いた。するとまるで吸い込まれるに膝が地面に沈みこんでいく。
ぶわりと恐怖が全身を包み込み、喉の奥が震えた。
怖い、助けて。
助けて隆永さん。
ズキン、と下腹部に鋭い痛みが走る。咄嗟に手を当ててそう心の中で叫んだその瞬間、バチッ────とまるで静電気を大きくしたような音がすぐ耳元で聞こえて、夢の奥底から意識がぐんと引っ張られる。
まだはっきりとしない意識の中で、それが夢であることとを理解する。
「……っ」
人の呻き声が聞こえて、ハッと我に返った。
急いで体を起こす。部屋の中は真っ暗で、手探りで携帯電話を探り当てて画面を開いた。
画面の白い光で照らされた先に居た人物に、先は目を見開いた。
「隆永さん……!」