「隆永さん? もしもし?」
電話の先で鐘が十九回鳴り響いた。
鐘の音で聞こえなくて黙っていたのかと思ったけれど、鳴り終わってからも隆永さんは一言も喋らなかった。
「隆永さん? 本当にどうし────」
ツー、ツー、と通話が途切れた音が聞こえた。目を瞬かせながら携帯の画面を見る。
どうしたんだろう、急に……。
首を捻りながら今の清志に声をかけた。
「お父さん、隆永さん仕事終わったって。もうすぐ来るんじゃないかな」
「そうか」
「なんかね、双子だって伝えた後に隆永さん急に黙りこくっちゃって……」
「嬉しすぎて言葉にならなかったんだろ。俺もお前の時そうだった」
優しい笑みを浮かべた清志に、「なるほど、そういう事か」と幸は納得する。
隆永さんの事だから、電話先でポロポロ泣いちゃったんだろう。こっちに着いたら笑ってやろう、と心に決めてポケットの上からお守りをそっと撫でた。