あまりにも必死なのが声からも伝わってくる。
本当は顔を見て直接伝えたかったけれど、今答えなかったら向かう途中で事故でも起こしそうだ。
仕方ないなぁ、と笑った。
「男の子だよ」
『男!? なら将来はサッカー選手か野球選手か、俺に似ていい男になるだろうしモデルか俳優にもなれるなぁ……!』
「もー、だから気が早いってば。さらりと自惚れ発言してるし」
『ふふふ、いいじゃん。沢山こんな話をしよう』
そうだね、と目を細めて相槌を打つ。
『そろそろ名前考えないとね』
「ふふふ」
『幸? どうした?』
性別が分かっただけでこの騒ぎようじゃ、双子だって言ったらどんな反応をするんだろう。
驚きと喜びで、本殿の屋根まで登っちゃうんじゃないかな。
「あのね、隆永さん。落ち着いて聞いてね」
『え、何?』
「実はね……」
『何、どうしたの? 勿体ぶらないでよ』
幸はそっとお腹に手を当てた。
「実は、双子だったの。お腹の赤ちゃん」
本当!? 双子だったの!? 凄いよ幸どうしよう! 俺一気に二人のお父さんになるのか!
思い浮かべていたそんな言葉は、何一つ聞こえてこなかった。
耳鳴りがするほどの深い沈黙に、電波が途切れたか充電が無くなったのかと一瞬困惑したけれど、時刻を知らせる社の鐘の音が聞こえてきて、そうでは無いことが分かった。