「それにしても隆永さん、今日休みじゃないよね? ご祈祷の予約が入ったって聞いてるよ。サボってるとまた怒られちゃうよ」
「仕事なんて手につかないよ。だって今日分かるんでしょ?」
子供みたいに目を輝かせた隆永が身を乗り出す。
それが可笑しくてくすくす笑った。
「四ヶ月検診で性別が分かる人って、少ないんだよ?」
「でも分かる人もいるってことだろ……!」
前の検診で次の月から安定期と呼ばれる期間に入り、お腹の子供の性別もそろそろ分かる頃だと言われてからというもの、隆永の落ち着きの無さに拍車がかかった。
「俺もついてく。本当はどの検診も毎回ついていきたいのに、真言の馬鹿が仕事ばっか入れるから……」
「誰が馬鹿ですって? 宮司」
第三者の声に振り向けば、入口で顔をひきつらせた真言が腕を組んで立っていた。
げ、と隆永が顔を歪める。
「お気持ちは分かりますけど、仕事を放り出さないでください」
「お前は彼女すらいないから俺にこんな酷い仕打ちが出来るんだよ」
「いないんじゃなくて作ってないんですよ! あなたのお世話が忙しすぎるせいでね!」
さっさとお勤めに戻ってください、と睨まれて渋々立ち上がる。