「隆永さん、私たちお父さんとお母さんになるんだって」

「……は?」

「赤ちゃん、できたみたい」



愛おしそうに腹に手を当てて微笑んだ幸を呆然と見つめる。

言葉が頭の中を何度もぐるぐると回って、やがて理解した瞬間両手が震えた。


「ほんと、に?」

「ちゃんとした検査しなきゃ分からないけど、禰宜が多分そうだろって」

「俺らの、子供?」

「私たち以外に誰がいるの」



無意識に手が伸びてその小さな体を力一杯に抱きしめた。

込み上げてくるものがありすぎて上手く言葉がまとまらない。

彼女にもそれが伝わっているのか、己の背に回った小さな手が優しく背を摩る。



人前で泣いたのはいつぶりだろうか。



「……っ、ありがとう。幸もこの子も、一生かけて守るよ」

「頼りにしてますよ、お父さん」

「女の子だったらパパって呼ばせたいし結婚はさせない」

「気が早いなぁ」



顔を見合せて笑い合う。

まるで天が味方するように重い灰色は雲が晴れて、窓から春の日差しが二人に降り注いだ。