「────幸、本当に大丈夫?」

「もう、隆永さんしつこいよ。大丈夫だって」

「だってこれからある意味妖怪みたいな人間と毎日寝起きするんだよ?」

「ダイジョーブ! 私お年寄りには好かれる性格なの」


結婚の挨拶、両家の顔合わせ、結納、結婚式……と、まるで流れるように数あるイベントは過ぎ去り、ついに今日幸は神々廻家の前、わくたかむの社の鳥居の下に立っていた。

何度か足を運んではいたが、何度ここへ来てもその大きさには驚かされる。



「でも……」



眉根を寄せた隆永に、幸は微笑んだ。



「分かってるよ。結婚式の日ですらあんなに針のむしろ状態だったんだもん。なんとなく想像はつくよ」

「……なるべくそばに居るようにする」

「仕事あるでしょ? それに何人かは私の事、"土蜘蛛の目玉を抉った凄い一般人"って思ってくれてるから好意的なの」

「それは、好意的なのか?」



もちろん好意的な意味もあるが、その大半は恐れを抱いているなんて幸の預かり知るところでは無い。